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I.顔面外傷の原因としてのスポーツの位置
顔面骨折の原因を調べると,交通事故,けんか,墜落と並んでスポーツによるものが多い。最近の主な報告からスポーツ外傷の割合を拾ってみよう。Toronto小児病院群の1986〜90年の統計では137名の小児顔面外傷のうち,15%がスポーツによるものであり1),これは交通外傷(50%)墜落(23%)に次いで多い。イタリアのペルガ大学耳鼻咽喉科では1980年から88年の間の1,952例の頭頸部外傷中の208例(22.7%)がスポーツによるものであった。多いのはサッカー時の衝突で鼻骨骨折が多かった2)。1978年からの10年8か月間に大阪市大耳鼻咽喉科では674例の顔面骨折を経験し,そのうち11%がスポーツによるものであった。骨折部位は鼻骨が最も多く50%を占めたが,そのうちスポーツに起因するものは30%であった3)。また東京医科歯科大学口腔外科の1977年からの15年間の顔面骨折患者847名中のスポーツ外傷によるものは89名(10.5%)であった。原因のスポーツはラグビー,スキーの両者で約半数を占め,最も多い部位は診療科を反映してか,下顎骨骨体が56.2%を占めた4)。これ以外のわが国での口腔外科領域からの報告によるスポーツ外傷の割合は6〜15.2%である。飯沼ら5)の過去5年間の統計によれば,221例の顔面外傷におけるスポーツ外傷症例は74例(34%)に及んでいる。そして耳鼻咽喉科領域からの発表を眺めるとその割合は20〜40%であるという。
スポーツ外傷の原因を分類すると,①他のプレイヤーとの衝突,②地面に転倒,③運動用具との衝突に分類されるが,このうちでは①が最も多い。
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