トピックス 耳鼻咽喉・頭頸部領域のスポーツ外傷
1.耳・側頭骨
肥塚 泉
1
,
久保 武
1
1大阪大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.20-27
発行日 1995年1月20日
Published Date 1995/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901069
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I.スポーツと耳鼻咽喉科
健康に対する人々の関心が高まるにつれ,これまでは肉体的あるいは精神的な鍛錬という要素が強かったスポーツが,健康や体力の増進あるいはその維持の一手段として,広く一般に普及するようになった。それに伴って,これまでは運動選手あるいは武道家に特有と思われていた種々のスポーツ外傷の診断および治療を,スポーツ医学を専門とする専門医でなくとも,われわれ耳鼻咽喉科医が担当する機会が増えてきた。
図1にスポーツ安全協会(昭和60年度)による,スポーツ外傷の発生部位とその頻度を示す。手指部,足関節で全体の約3分の1を占めることがわかる。われわれ,耳鼻咽喉科に関係があると思われる頭部,顔面,頸部,口,耳,鼻についてはいずれも0.2〜1.4%と比較的頻度は低い。しかし,顔面は現代社会において唯一,衣服で覆うことのできない部位であり,また耳部や鼻部の損傷に伴う醜い変形や,機能障害が患者に与える心理的影響ははかり知れないものがある。また耳部への強い打撃により,側頭骨骨折をきたした際は,生命に危険を及ぼすのはもちろんのこと,側頭骨により保護されている三半規管,蝸牛そして顔面神経が損傷され,その結果,めまい,平衡障害,高度難聴,顔面神経麻痺などをきたし,これらはQOL(Quality of life)の著しい低下をきたす。つまり,これらの部位の外傷の診断および治療に当たって,われわれ耳鼻咽喉科医は,適切かつ迅速な初期治療により,できる限り2次的変形や機能障害を残さないようにしなければならない。
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