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側頭骨の画像診断には一般にCTおよびMRIが用いられる.側頭骨領域の特徴としては,立体的に複雑な構造であることと,各構造自体が小さく空間分解能の高い撮影が要求されるという点である.CTは骨構造の微細な変化の描出に優れ,MRIは軟部組織コントラストの変化検出に優れる.後頭蓋窩および内耳道については,CTでは周囲の厚い骨によるX線の線質変化(beam hardening artifact)によって詳細な検討が困難であるので,MRIを用いるのが一般的である.また内耳についても,形態異常と内部石灰化や空気の有無のほかはMRIを用いるのがよい.例えば,外傷後の骨折線や迷路気腫の検出についてはCTのほうが優れるが,迷路内の軟部組織の検出にはMRIが優れる.中耳および外耳については,外耳道骨壁や耳小骨,顔面神経管などの描出に優れるCTを用いることが多いが,外耳道腫瘍の進展範囲や中耳真珠腫の性状把握にはMRIも用いられる.側頭骨領域の画像診断で重要なことは,まず画像そのものが診断に値するような適切な撮影がなされているかどうかを判定することである.不十分な条件で撮影された画像は,この領域を専門とする画像診断医にとっても読影が難しく,ましてこの領域の画像を見慣れない諸家にとっては評価がきわめて困難である.次に適切に撮影された画像で,正常解剖を習熟し,さらには代表的疾患の典型像を知っておくことである.
内科医がこの領域の画像を目にするのは,めまい,顔面神経麻痺,頭痛,耳痛,難聴,耳鳴りなどの症状をもった患者の場合と思われる.この領域の症状が全身疾患の一症候として現れることもあるので,内科医もある程度は側頭骨領域の画像診断を知っておく必要がある.本稿では,最新の装置を用いて得られたCT像とMRI像によって,まず側頭骨領域の正常解剖を習熟し,ついで上述の症状を呈する代表的な疾患の画像を提示する.
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