特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅵ.外傷診療NAVI
2.側頭骨骨折
伊藤 吏
1
,
欠畑 誠治
1
1山形大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座
pp.163-168
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102151
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Ⅰ はじめに
側頭骨骨折は交通外傷によるものが最も多く,その他,転落,暴行などが原因となる1,2)。側頭骨には聴器や前庭・三半規管,顔面神経が存在しており,この部位の骨折では耳出血,難聴・耳鳴り,めまい,顔面神経麻痺,髄液漏など多彩な症状をきたす。また,脳挫傷や脳出血など重篤な頭蓋内合併症を伴うことも多く,対応は慎重に行わなければならない。
側頭骨骨折は古典的には,錐体骨の長軸方向に対して骨折線が平行な縦骨折(longitudinal fracture)と垂直な横骨折(transverse fracture),両者を認める混合骨折(complex fracture)に分類され(図1),80~90%を縦骨折が占める。
1.縦骨折
縦骨折は通常,側頭部から頭頂部に外力が及んで生じる。骨折線は側頭骨鱗部から外耳道後上方,鼓室天蓋を経て内耳前方を通り,破裂孔に至る。骨折線は迷路骨包を迂回することが多く,内耳障害は少ない。
2.横骨折
横骨折は前頭部や後頭部,乳様突起後方など,前後方向からの強い衝撃を受けた際に生じる。骨折線は後頭蓋窩から錐体骨を横断して中頭蓋窩に至る。横骨折は側頭骨骨折の10~20%と発生頻度は低いが,骨折線が内耳を横切るため高度感音難聴や回転性めまいを生じ,しばしば重篤な頭蓋内合併症を伴い致死率も高い。
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