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はじめに
耳・側頭骨疾患の診断においては画像検査が不可欠である。側頭骨は耳管から鼓室,乳突洞,乳突蜂巣という外界から連続する複雑で個人差の大きい含気腔とその中の巧妙に構成された耳小骨を中心とする伝音機構,さらには最も緻密で微細な感覚器である蝸牛と前庭とを含有する内耳骨包からなる。また,側頭骨内にはこれらに加えて顔面神経およびその分枝が複雑に走行するなど,体内で最も複雑な骨組織であることは間違いない。このような側頭骨およびその隣接臓器に生じる耳・側頭骨疾患はこれらの構造に関連する多彩な症状を呈し,その診断に際しては,はじめに聴覚検査,前庭機能検査,顔面神経機能検査などの機能検査を行うが,治療方針を決定するためには画像検査を行う必要がある。
近年の画像検査法の進歩はめざましく,特にMRIを主体とする軟部組織の画像診断の精度は格段に向上しているが,複雑な骨組織に生じる耳・側頭骨疾患の診断への応用には一定の限界がある。一方,CTは耳・側頭骨疾患の診断の主役を担っており,コーンビームCTなどの新しい検査法によってその解像度も飛躍的に向上しているが,MRIに反して軟部組織の情報は少なくなるなど,各検査法の適応と限界とを理解する必要がある。このように耳・側頭骨の画像診断では対象となる耳・側頭骨疾患の病態を理解し,適切に画像検査法を選択,画像診断を進めることが最も重要となる。
本企画「画像診断パーフェクトガイド―読影のポイントとピットフォール」では,「画像診断の狙い」として各疾患の病態と特徴からみた画像診断の位置づけを明らかにし,「画像診断の進め方」で具体的な画像検査の種類や撮影条件などを整理していただいた。次いで「読影の実際とポイント」では代表例の画像を呈示していただき,各執筆者の豊富な経験から,読影のポイントを,また,最も複雑な構造と個人差などから生じうる「読影のピットフォール」についてもまとめていただいた。「読影の実際とポイント」と「読影のPitfall」が本企画の中心であり,代表例の画像を確認しながらしっかりと読んでいただきたい。最後は「Take Home Message」であり,まず初めに「Take Home Message」を読んで何が重要なポイントかを把握したうえで「読影の実際とポイント」から「読影のPitfall」と通読していただくのも理解の助けになるので活用していただきたい。
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