特集 外来診療マニュアル—私はこうしている
I.症状の診かた・とらえ方—鑑別のポイントと対処法
10.頬部腫脹
市村 恵一
1
1東京大学医学部附属病院分院耳鼻咽喉科
pp.43-45
発行日 1991年11月5日
Published Date 1991/11/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900373
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われわれが頬部腫脹を呈した患者を診察する際に心すべきことが2つある.すなわち,①生命に関係する疾患を見落とさないことと,②機能障害を残すおそれのある疾患に対し,そうならないように適切に治療することである.代表的疾患である上顎癌をはじめとする悪性腫瘍や,頭蓋内や眼窩の合併症を引き起こす蜂窩織炎・膿瘍などはこの範疇にはいる.
確定診断に至るまでの過程にも2通りの道がある.一つは,患者を見た瞬間に,(今までの経験,知識に裏づけられ,)こういう病態だと直感する方法である.ある疾患には典型的な症状,徴候があり,それは一度見て経験し,心に刻み込めば忘れるものではない.しかし,この面を強化するには実地で場数を踏むしかないのでここでは扱わない.もう一つは,筋道を立て,考え得る疾患を全て網羅した上で,鑑別のポイント毎に対象疾患の枠を狭めていき,鑑別診断を適切に完遂する方法である.われわれの日常診療においては,これら両者を適当にミックスしながら診断にたどりついているわけであり,それをスムースでスマートに行えるのが名医なのである.ここでは後者の方法から診断決定に至るまでの過程を示してみたい.
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