- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
世界的に「難聴」が注目されています。WHOの「難聴と聴覚障害」のファクトシートによれば,①全世界でおよそ4億6600万人が日常生活に支障をきたす聴覚障害を抱えており,②2050年までには9億人以上になると推測され,③11億人の若者たちが,デジタル音楽再生機による音楽聴取などによって将来的に難聴のリスクをもつと危惧しています。④しかし,聴覚障害への取り組みは十分ではなく,世界での年間コストは7500億米ドルにのぼると試算されますが,聴覚障害予防の費用対効果は高いことから,早急な対応が必要であると警鐘を鳴らしています。WHOは2007年3月3日に国際耳の日(International Ear Care Day)を制定し,難聴予防のためのキャンペーンを行ってきました。日本の「耳の日(3月3日)」は,1955年に日本聴覚医学会によって制定され,その後は日本耳鼻咽喉科学会がイベントを主催しています。今年は第64回「耳の日」が全国で開催されたように,世界に先駆けた「耳の日」行事を行ってきました。2015年の国際耳の日のキャンペーンは“Make listening safe”,今年は“Check your hearing”で,難聴予防の重要性を啓発しており,“hearWHO”という聴力自己チェックの無償アプリケーションを発表しました。また,2017年のアルツハイマー病協会国際会議の議論をまとめたLancetの総説により,認知症予防のために介入可能な35%の要因のうち,難聴が9%と最も介入効果が高いと報告されたことも,世界的に「難聴」が注目されるきっかけになりました。このような世界的な情勢を受けて,2019年4月に石原伸晃衆議院議員を会長とし,自民党国会議員を中心に「難聴対策推進議員連盟」が結成されました。この議員連盟の第一弾の要望事項として,新生児難聴のスクリーニング体制と聴覚支援学校の整備について概算要求を出していただきました。成人の難聴に関しては現在検討中です。このように「難聴」対策は世界的にも日本でも大きく動き出しており,今後の成果を期待したいと思います。
さて,今回の特集はまさに「難聴」に対する「補聴器と人工聴覚器の最前線2020」で,最先端の情報をまとめていただきました。原著も力作揃いですので,「難聴」に対する世界的な流れを実感しながらお読みいただきたいと思います。
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.