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I.はじめに
語音を検査用の素材として用いる聴覚検査を語音聴力検査という。われわれは日常の音声コミュニケーションを語音を用いて行っており,その意味からは純音聴力検査より聴覚能力を評価するうえで重要な検査といえる。また,語音の正しい聴取には純音の聴取に比べ,中枢まで含めたより高次の機能が要求されるので,単に末梢の聴覚機能だけでなく中枢まで含めた聴覚の総合機能を評価し,診断できる可能性を秘めている。しかし,純音聴力検査に比較し,語音自体が意味をもつなど聴覚機能以外の要因の影響を受ける可能性や,語音聴力検査単独では診断的意義が時として明白でないなどの理由から純音聴力検査が基本の聴覚検査となっており,通常,語音聴力検査は純音聴力検査の結果を得た後に行われる。
語音聴力検査の規定に関しては,測定装置については,国際的にはIEC 60645-2:19931)に,日本においてはJIS T 1201-2:20002)で規定されている。語音聴力検査法に関しては,国際的には1996年にISO 8253-3としてAcoustics-Audiometric test mehtods-Part 3:Speech audiometry3)が示された。医学の国際化を考えると,語音聴力検査法も国際的な方法との整合性が要求されるが,一方検査素材の特性は各国語の特徴に影響されるため,ISOに完全に準拠することが適当かどうか議論の分かれるところである。また,日本においては日本聴覚医学会の語音聴力検査法が普及している。全国規模でのデータの互換性を考えると,まず日本聴覚医学会の語音聴力検査法を理解することが重要と考える。
本稿では日本聴覚医学会の語音聴力検査法4,5)を中心に述べ,次いでその他の語音を用いた聴力検査について記載する。
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