- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
すばらしい快挙です。昨年の大村智先生に続いて2年連続でノーベル医学・生理学賞を東京工業大学栄誉教授の大隅良典先生が受賞しました。日本人のノーベル賞受賞は物理学賞を入れて3年連続,通算では25人目です。大隅良典先生は細胞が不要になった,タンパク質などを分解する「オートファジー」と呼ばれる細胞内機構を解明しました。細胞は栄養が足りない状態になると,生き残るために自らのタンパク質をアミノ酸に分解し,新しいタンパク質の材料やエネルギー源として利用します。また,不要なタンパク質も同じように再利用するなど,オートファジーは,細胞を正常に保つうえで欠かせない細胞内機構です。パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経疾患では正常のオートファジーが機能せず異常なタンパク質が細胞内に蓄積することがその発症機序の1つとされており,これら異常なタンパク質を分解するオートファジーを誘導することで根治療法につながる可能性があり,今後の研究の進展が期待されています。また,一部の進行性感音難聴でも異常なタンパク質が関与していることがわかっており,慢性感音難聴の予防法や治療法としても期待されます。もう1つの衝撃的なニュースはボブ ディラン氏のノーベル文学賞受賞です。賛否両論あるようですが,学生時代から愛聴してきたボブ ディラン氏の歌手としての初めての受賞は個人的には大変うれしいニュースでした。毎年期待されている村上春樹氏の受賞は残念ながら今年も見送りになりましたが,一ハルキストとして来年に期待したいと思います。
さて,今月号の特集は「聴神経腫瘍診療のNew Concept」です。聴神経腫瘍の疫学と病態,臨床像と鑑別診断,神経線維腫症II型の臨床像と関連遺伝子,growth rateなど聴神経腫瘍の疾患理解のための最新知見と治療戦略に関する最新情報まで,聴神経腫瘍診療のすべてを網羅した素晴らしい特集になりました。また,手術に関しては,動画付き論文としていただきました。QRコードまたはURLにアクセスして動画をご覧いただけます。また,2編の原著も力作です。ボブ ディランの名曲を聴きながら是非お読みいただければと思います。最後に特集をご執筆いただいた先生方,ご投稿いただいた先生方に改めて御礼申し上げます。
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.