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2012年に山中伸弥教授らが万能細胞であるiPS細胞「体細胞のリプログラミング(初期化)による多能性獲得の発見」でノーベル賞を受賞され,日本中が興奮したのも記憶に新しいことですが,今回は何と全能細胞の発見です。STAP細胞「Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency:刺激惹起性多能性獲得細胞」と名付けられた夢の細胞が弱冠30歳の女性研究者,小保方晴子理化学研究所研究ユニットリーダーによってNatureに発表され,その衝撃は世界中を駆け巡りました。世紀の発見と割烹着姿で実験をする可愛らしい研究者とのギャップが話題をさらに大きなものにして大変な騒ぎになっています。「植物やイモリは傷つけるなど外からの刺激を与えれば,万能細胞化して再生する。ヒトを含めた哺乳類でも同様のことが考えられないか」という素朴な疑問から,「小さい細胞を取り出す操作をすると幹細胞が現れるのに,操作しないとみられない。幹細胞を取り出しているのではなく,操作によってできるのではないかという考えに至り,pH 5.7という酸性条件で25分間置くという条件にたどり着き,遂にSTAP細胞が発見されたということです。体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化することで,多能性細胞へと変化するというもので,記憶の消去のみならず自在な書き換えを可能にする新技術の開発につながる画期的なブレイクスルーです。今後ヒトの細胞でも作製が可能になれば,再生医学のみならず幅広い医学・生物学に貢献する革新的な細胞操作技術になるものと期待されます。
さて,興奮は醒めませんが,少し冷静に今月号の2つの特集に目を通してみましょう。今年もまた花粉症の季節を迎えようとしていますが,まさにこの時期にうってつけの「特集①アレルギー用薬の上手な使い方」です。先日,舌下免疫療法薬も認可されましたので,今後のアレルギー治療法の進展が楽しみです。特集②は「知っておきたい血液内科の知識―専門医の診方・治し方」です。悪性リンパ腫をはじめとして耳鼻咽喉科診療のなかで診断されることも少なくありませんので,この機会にポイントを押さえておきたいものです。STAP細胞だけではなくソチ冬季オリンピック・パラリンピックと興奮の日々が続きますが,興奮の合間にぜひお読みいただければと思います。
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