特集 耳鼻咽喉・頭頸部領域の痛み—その機序と臨床
III.非癌性疼痛
三叉神経領域の痛みとその臨床
術後性上顎嚢胞
飯沼 壽孝
1
1東京大学医学部附属病院分院耳鼻咽喉科
pp.901-904
発行日 1989年10月20日
Published Date 1989/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200434
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I.特徴的な痛み
術後性上顎嚢胞(以下,本症と略)を症候から分類1)すると,頬部症状型,眼症状型,鼻症状型,口腔症状型である。痛みについて述べれば,頬部症状型(疼痛,重圧感,緊満感,不快感異常感,しびれ),眼症状型(眼痛,眼圧迫感),口腔症状型(歯痛,歯牙異常感,歯牙浮動感)である。痛みは三叉神経第2枝を介する投射痛か直接の刺激痛である。本症の痛みは嚢胞が拡大して,境界壁の痛みを感ずる構造に接することによって発生する。嚢胞が占拠する部位に応じて異なる境界壁に接するので,表1に示す症状型となる。表1で田村ら2)と村上ら5)の報告は耳鼻科の資料であり,立川3)と毛利ら4)の報告は歯科を含む資料である。耳鼻科側では頬部症状,歯科側では口腔症状の頻度が高い。また,頬部痛と頬部腫脹とには集計上で重複はあるが,頬部痛の頻度は40-50%で,頬部腫脹は50-60%であり,腫脹に疼痛は必発することではない。副鼻腔嚢胞一般に関していえば,症候は大別して炎症症状(激痛,発赤,腫脹),圧迫症状(鈍痛,不快感,圧迫感,腫脹),両者の混合症状となる6)。以下に呈示する症例1は混合症状,症例2は圧迫症状を示した。
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