特集 耳鼻咽喉・頭頸部領域の痛み—その機序と臨床
III.非癌性疼痛
三叉神経領域の痛みとその臨床
帯状疱疹の痛み
檀 健二郎
1
1福岡大学医学部麻酔科
pp.905-908
発行日 1989年10月20日
Published Date 1989/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200435
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I.帯状疱疹痛の治療が今なぜ大切か?
1)帯状疱疹痛は,皮疹発症前および存続期の痛みが激烈である。痛みは強い交感神経刺激症状をともない,局麻薬による交感神経節ブロック,硬膜外ブロックを含む末梢神経ブロックの除痛効果が非常に優れ,他の方法に代え難い。その有痛期間は普通3週間位である。帯状疱疹は三叉神経第一枝領域に約20%の発症を見る。T2より頭側まで含めると46.5%を占める(図1)。頭・頸部は発症頻度が極めて高い部位である。しかも合併症として,①眼合併症(角膜潰瘍,ぶどう膜炎,視神経炎)の発生率が三叉第一枝領域の帯状疱疹の15〜40%を占める(表1)。重篤なものとして稀ではあるが対側偏麻痺の発生が,頭頸部帯状疱疹の発生例では存在する。水痘帯状疱疹ウィルスが脳血管壁に移行し,動脈炎を起こしたことによる。また動脈瘤形成,その破裂の報告もみられる。しかも,この15年間に帯状疱疹発生数が著しく増加している(図2)。
2)帯状疱疹の発生と年齢の関係をみると,われわれ福岡大学病院麻酔科の受診者アンケート調査では発症時50歳以上が749例中565例(75.8%),60歳以上が390例(52.0%)と50歳以上の成人に多発している。そしてこれらの年齢層では,大変癒り難い帯状疱庖疹後,神経痛に移行する率が高い。早期から十分に除痛効果のある局麻による神経ブロック療法は,まず皮疹時の大変困る痛みが著るしく軽減される。皮疹治癒促進に貢献することが臨床的に推測され,激しい帯状疱疹神経痛の発生数を抑制する。
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