特集 耳鼻咽喉・頭頸部領域の痛み—その機序と臨床
I.痛みの生理
痛みの生理
横田 敏勝
1
1滋賀医科大学生理学第一講座
pp.775-804
発行日 1989年10月20日
Published Date 1989/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200415
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I.痛みの末梢機構
A.皮膚の痛覚線維
1.侵害受容
Sherrington (1903)60)は頸髄下部を切断したイヌ(脊髄イヌ)の足蹠に圧刺激を加えると刺激された下肢を伸展するが,同じ場所をイバラのトゲで刺激すると下肢の屈曲反射が現れて,刺激を避けることを観察した。この観察を踏まえて,1906年に出版された著書61)の中で侵害受容神経という概念を導入した。
それによると,数多くの脊髄反射のうち,痛覚神経を求心路にもつ屈曲反射がとくに強力で,他の反射と競合する場合,すべてに優先する。したがって,痛みは"至上命令的な防御反射に付随する心理過程"である。しかしながら,脊髄動物が痛みを感じるわけがない。そこで痛覚神経を求心路にもつ脊髄反射を誘発する各種末梢刺激に目を向けると,刺激のエネルギーの種類にかかわりなく有害であるという共通点に気付く。感覚の観点から痛覚神経とされるものを,反射の観点から侵害受容神経と呼ぶことができる。そうすると侵害受容神経を求心路とする反射は侵害受容反射になる。
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