海外トピックス
アメリカのスピーチリハビリテーション事情
小林 範子
1
1ATR視聴覚機構研究所
pp.239-241
発行日 1989年3月20日
Published Date 1989/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200325
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1.音声言語の社会的地位
1988年はアメリカ大統領選挙がある年で,秋口に入ると,選挙戦が一段と熱気を増したのが日本にいても感じられた。現地アメリカでこれを目の当りに見ると,大統領候補およびその支持者,有権者,テレビなどから産出される音声エネルギーの強さのためか,「国を挙げての大騒動」という印象を受ける。よく話し,議論し,そして倦まない。趣向をこらした各種の効果を取り混ぜた選挙キャンペインの賑やかさから,アメリカ滞在1年目に経験した1980年の選挙では,その無限の派手さとアメリカ人らしい(と当時の私が思っていた)活発さだけが顕著に感じられた。
英語の理解力が少々増加し,アメリカ文化の特徴も実感としてわかるようになった4年後,大統領選挙が前回とは異なって見えてきた。あの騒ぎは,大統領選挙の重大さとアメリカ国民の気質の現われ以外に,アメリカにおける人びとの音声言語運用法が具体的な特徴のひとつを反映したものとして写った。今回の選挙戦もそのような視点から観察すると,なかなか興味あるものとなった。
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