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要約
アメリカにおける,ウィメンズヘルスの理念と具体的な活動およびリプロダクティブ・ヘルス/ライツの活動は,以下のとおりだった。
●大学教育でウィメンズヘルスが取り上げられていた。教育学部ではジェンダー差別と女性の地位向上に教育の果たす役割を論じ,人間科学部では人間として,女性としてのセクシュアリティを基盤にトータルなヘルスケアを論じ,さらに心理・社会そしてフェミニストの視点と行動科学的側面が論じられていた。
●大学の研究機関では研究データの結果から,エイジング(加齢)をベースにした生涯にわたる健康問題と,月経周期を伴った女性性をベースに閉経前後に頻発する健康問題が輻輳してとりあげられていた。女性がより高いQOLをめざし,ライフスタイルを主体的に改善してどう生きるか,最終的にはサクセスフルエイジングをめざしてどう生きるか,というヘルスプロモーションの理念が息づいていた。
●地域活動では,社会教育の公民館活動の中に,セルフエスティーム(自尊感情)講座というプログラムが実施されていた。問題のある女性にセルフエスティームが低いことがあるので,ウィメンズヘルスには欠かすことのできない視点ということであった。また,地域の医療機関:産婦人科を来院する女性たちの相談は,いかに短い期間で子どもを産み育てるかに集中していた。しかし,リプロダクティブ・ヘルス/ライツという視点は未発展であった。
ウィメンズヘルスを展開していく場合,パートナーである男性の意識や行動が多大な影響を及ぼす。帰国直前の大学ブックストアで偶然に見つけた1冊の本“Men's Health and lllness”は,男性自身による提言であった。21世紀のアメリカ社会の疑いない変革を垣間見ることができた。
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