巻頭言
医療・福祉の国際協力―チリの医療事情から学んだこと
長岡 正範
1
1順天堂大学大学院リハビリテーション医学
pp.901
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100186
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2000年から5年間実施されたJICAのチリ身体障害者リハビリテーションプロジェクトに参加する機会がありました.チリのことは,ワインの輸入などを通じてよくご存知の方も多いと思います.経済指標では,南米ではアルゼンチンやブラジルに次ぐ位置にあり,発展途上国と言っても比較的豊かな国です.リハビリテーション分野で政府開発援助(ODA)を考えるにあたり,医療・福祉とも,その国の体制とは切り離せません.世界一の平均寿命を達したわが国の医療・福祉制度ですが,果たしてそれは外国に伝えるレベルなのか,異文化社会にうまく伝えられるのか,悩みは少なくありませんでした.
プロジェクトの目的は,首都サンチャゴにあるペドロ・アギレ・セルダ国立小児リハビリテーション病院(以下,PAC)が老朽化しているため,資材を含むプロジェクト技術協力を企画し,日本側は国立身体障害者リハビリテーションセンターが窓口になり,わが国の小児リハビリテーションの医療機関の協力で研修生の受け入れ,専門家派遣によってPACの医療技術の向上と,それを通じてチリの障害児政策への援助を行うというものです.発展途上国では,一般に貧富の差が大きく,チリでも裕福な人が利用する民間病院は立派な設備をもっています.
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