Japanese
English
特集 知っておきたい皮膚科の知識―専門医の診方・治し方
掌蹠膿疱症
Pustulosis palmaris et plantaris
小林 里実
1
Satomi Kobayashi
1
1聖母病院皮膚科
pp.911-914
発行日 2011年11月20日
Published Date 2011/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101995
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.掌蹠膿疱症と治療の問題点
掌蹠膿疱症とは,手掌,足底に無菌性膿疱が多発し,紅斑,鱗屑を伴う膿疱症の1つである。爪下や爪母の病変では爪の変形や肥厚を生じる。四肢に乾癬様の掌蹠外皮疹がみられることもある。喫煙する中年女性に好発し,ステロイド外用薬,ビタミンD3外用薬,紫外線療法といった対症療法もある程度奏効するが,これらのみでは皮疹軽快までに平均5~7年を要する。しかし,手足の膿疱と紅斑は,常に手を隠して生活する,痛くて歩けないなど患者にとって大きなQOL障害を招いている。また,10~30%で胸肋鎖骨間骨化症をはじめとする掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis:PAO)を伴うが,付着部炎からしばしば骨髄炎をきたし,激烈な痛みを伴うこともある。
この疾患の治療における大きな問題点は,「治らない」,「慢性です」といわれた患者が藁をもすがる思いで皮膚科,耳鼻咽喉科,歯科,リウマチ内科,整形外科を転々としていることである。医療機関での治療を諦め,効果を信じて自己輸入したビオチンを飲み続ける患者もいる。掌蹠膿疱症は皮膚疾患でありながら,そのほとんどが扁桃,歯科領域など他科の病巣感染によるという,科の分類を超えた病態を有する。関連科が連携して原因を見出し,適切に治療すれば,決して「治らない疾患」ではない。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.