特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅲ.診断・治療をマスターする
5.蝸牛神経炎・前庭神経炎
佐野 肇
1
1北里大学医学部耳鼻咽喉科
pp.240-244
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101851
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Ⅰ 病因・病態
『前庭神経炎』という疾患は一つの独立した疾患として診断基準が確立し広く認知されているが,その病因が感染による炎症であるかは明らかではない。一方,『蝸牛神経炎』という疾患名にはあまり馴染みがないと思われるが,立木ら1)により,感冒に併発する急性感音難聴で聴覚機能検査において後迷路性難聴の特徴を示すもの,としてその疾患概念が示されている。しかしこの『蝸牛神経炎』は,現状では突発性難聴の中に含まれて診断と治療が行われているのが通常であると思われる。以上の二つの疾患概念は,感染症が原因として疑われてはいるものの確定はできていないものであり,現状では一般臨床においても感染症として対応がなされているわけではない。
一方,明らかな感染症と考えられる蝸牛神経炎・前庭神経炎としては,髄膜炎に伴う場合と帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)によるものが挙げられる。VZVにより蝸牛・前庭神経炎を生ずる代表的疾患はハント症候群であり,VZVについては顔面神経麻痺の項で説明されると思われるのでここでは詳しくは述べない。
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