特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅰ.耳鼻咽喉科感染症の基本をマスターする
8.ワクチン医療の動向
岩田 敏
1
1慶應義塾大学医学部感染制御センター
pp.57-70
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101819
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Ⅰ はじめに
ワクチンで防ぐことのできる疾患(vaccine preventable diseases:VPD)と呼ばれている)は,ワクチン接種により防ぐのが望ましいことはいうまでもないことであり,近年国内でもその機運が盛り上がっている。日本は諸外国と較べて接種できるワクチンの種類が少なく,特に公費負担で接種できるワクチンの種類が限られているということで,ワクチン後進国といわれてきた経緯があるが,そう呼ばれないように,少しずつではあるが諸外国に追いつこうとする努力が払われているところである。
VPDをワクチンで防ぐことの意義は,社会における疾病のコントロールにあることはもちろんであるが,細菌性髄膜炎などの予後の悪い重症感染症から個人を守るワクチン,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンのように癌(子宮頸癌)の発生を予防するワクチンも開発され,ワクチンの重要性はより高まっている。またワクチンは,職業感染予防,施設内感染予防,耐性菌増加の抑制といった医療福祉施設内感染対策としても重要な意味をもっている。社会全体でVPDを減らすことにより医療経済的効果が得られ,医療福祉施設では施設内感染・職業感染予防により安心して医療ができる環境が整うことになる。
本稿では現在わが国で実施されている主要なワクチンの最近の動向について概説する。
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