Japanese
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シリーズ 知っておきたい生理・病態の基礎
10.咀嚼の生理とその障害の病態
10.Physiology of the mastication and the clinical condition of a patient
米澤 宏一郎
1
,
丹生 健一
1
Koichiro Yonezawa
1
1神戸大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野
pp.783-788
発行日 2010年10月20日
Published Date 2010/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101696
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Ⅰ はじめに
咀嚼とは『摂食・嚥下』という食事行動の一部分であり,Leopoldら1)が提唱した摂食・嚥下運動の5期モデルでいう,準備期(咀嚼期)の行動である。咀嚼期では,実際に口腔内に取り込まれた食物を歯列で粉砕すると同時に,舌が食物を唾液と混ぜて嚥下に適した物性に調整する。この間,食物の物性や化学的性質(味,におい)は脳に伝えられ,おいしさを感じることにもつながっている。一方,Feinberg2)は5期モデルの準備期と口腔期をまとめて口腔期としたうえで,5つに分類した。すなわち,食物を口に取り込む捕食,加工処理,移動・食塊形成,舌による送り込み,移行相である。これらは広義の咀嚼であり,狭義の意味での咀嚼はここでいう加工処理に当たる。
ところが近年,人間の摂食・嚥下運動,特に中咽頭での食塊移送と食塊形成を上記モデルで表現するには限界があると考えられるようになった。Palmerら3)によれば固形物を摂食した際には咀嚼され唾液と混和された食物は,咀嚼が進行しながら中咽頭へ達する。すなわち,咀嚼時には中咽頭でも食塊形成が行われていることが明らかとなった。このような固形物摂食時の食物輸送機構はprocess modelと提唱されている。
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