特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の検査マニュアル―方法・結果とその解釈
Ⅰ.聴覚検査
8.蝸電図
和田 哲郎
1
,
田渕 経司
1
,
原 晃
1
1筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻・臨床医学系耳鼻咽喉科
pp.57-64
発行日 2010年4月30日
Published Date 2010/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101591
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ はじめに
聴覚は20~20kHzの周波数領域の振動という物理的な外界の刺激を音として受容する特殊感覚である。空気の粗密波という機械的エネルギーで伝えられた音振動は,蝸牛のコルチ器によって電気的エネルギーに変換される。その結果,蝸牛神経の興奮を惹起し,以後,聴覚伝導路を経由し聴覚野に情報が伝えられる。この機械電気変換された最初の電気的な現象(誘発反応)を測定し,聴覚の評価,病態の診断あるいは予後の判定に用いるのが蝸電図検査(electrocochleogram:ECochG)である1)。
音刺激により誘発される電気現象には,構成成分として蝸牛マイクロホン電位(cochlear microphonics:CM),加重電位(summating potential:SP),蝸牛神経複合活動電位(compound action potential:CAPまたはaction potential:AP)があり(図1)2),音刺激からおおよそ3msec以内に認められる。これらの電気現象を,鼓室内あるいは外耳道深部に電極をおいて検出する。電極留置にやや煩雑な面はあるものの,より蝸牛近傍の情報が得られ,鋭敏な検査法である。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.