特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の機能検査―何がどこまでわかるか―
I.聴覚検査
6.蝸電図
西田 裕明
1
1西田医院
pp.45-53
発行日 2003年4月30日
Published Date 2003/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100976
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I.はじめに
蝸電図については既に多くの専門書に記載されている1~3)。本稿では特に蝸電図記録を成功に導くにはどうするか,そのノウハウについて述べる。それは,一口で言えばアーチファクトとの戦いである。
蝸牛の機能を客観的に知るには,現在のところ音響的反応の記録あるいは電気的反応の記録による2つの方法がある。前者は耳音響放射(otoacoustic emission:OAE)であり,後者は蝸電図(electrocochleogram:ECochG)である。蝸電図はその手技にやや煩雑さはあるが,感音難聴に対して内耳の機能をより詳細に把握するには最も威力を発揮できる検査法といえる。
蝸牛には種々の電気現象が存在する。その中で,音刺激によって誘発される蝸牛の電気反応には蝸牛マイクロホン電位(cochlear microphonics:CM),加重電位(summating potential:SP)集合電位または荷重電位4),蝸牛神経複合活動電位(compound action potential:CAP,AP)の3つがある。この3つの電気現象の記録図が蝸電図(electrocochleogram:ECochG)であり,これらの3つの電気現象を指標とした電気生理学的検査法を蝸電図法(electrocochleography:ECochG)と呼ぶ。
蝸牛における非常に微小な電気現象をヒトからも記録することを可能にしたのは,1960年代の初期頃より利用され始めた反応加算装置の開発と生体用増幅器の性能の向上といった医用電子工学の進歩に寄与するところが大きい。
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