特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の検査マニュアル―方法・結果とその解釈
Ⅰ.聴覚検査
7.耳音響放射
泰地 秀信
1
1国立成育医療センター耳鼻咽喉科
pp.49-55
発行日 2010年4月30日
Published Date 2010/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101590
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Ⅰ 耳音響放射の種類
耳音響放射(otoacoustic emission:OAE)は蝸牛から発生し外耳道内で検出される弱い音であり,音刺激により誘発されるものと自発的に発生するもの(自発耳音響放射,spontaneous OAE)とがある(表1)。OAEは蝸牛内の外有毛細胞の能動的な作用の副産物として生じており,内耳機能(外有毛細胞の機能)を他覚的にとらえる指標となる。
基底板振動には非線形性が存在し,この非線形性が蝸牛における鋭い周波数同調特性をもたらしているが,この特性は外有毛細胞の活動(能動性)による特殊な増幅作用によって生じている。OAEとは外有毛細胞の活動により生じた基底板の振動が,逆進行波→卵円窓→耳小骨→鼓膜→外耳道と放射されたものである(図1)。OAEの存在は1940年代に予想されていたが,実際に測定がなされるようになったのは1970年代後半である1)。OAE検査はプローブを外耳道に挿入するだけで,短時間で非侵襲的に内耳機能の測定が行えるので,新生児・乳幼児の聴覚スクリーニングや,微細な蝸牛障害の検出などに臨床応用が行われている2)。本項では,耳音響放射のうち臨床応用が広く行われている誘発耳音響放射(transient-evoked OAE:TEOAE)と歪成分耳音響放射(distortion product OAE:DPOAE)の測定法および結果の解釈について述べる。
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