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特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―外来手技とインシデント・アクシデント
2.扁桃周囲膿瘍穿刺・切開
2.Peritonsillar abscess:needle aspiration and incision
新谷 朋子
1
Tomoko Shintani
1
1札幌医科大学耳鼻咽喉科
pp.820-826
発行日 2009年11月20日
Published Date 2009/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101510
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Ⅰ.はじめに
扁桃周囲膿瘍は急性扁桃炎に続発して生じ,耳鼻咽喉科の日常診療ではしばしば経験される疾患である。膿瘍の穿刺または切開は外来で施行可能で症状を直ちに軽減させることができるので耳鼻咽喉科医としての専門性が高く,有効な治療法であるが,一方でリスクの比較的高い手技であるため解剖学的な位置関係を理解したうえでの施行を要する。また適切な治療で多くは改善するが,炎症が周囲に波及すると副咽頭間隙,咽頭後間隙に進展し,さらに縦隔洞にまで及ぶと生命を脅かす危険性もあるので,その診断,治療の選択においては迅速かつ的確な対応が望まれる。
医療におけるアクシデントは,『医療の全過程において発生するすべての事故のうち,患者に何らかの被害が及んだ事例』であり,インシデントは,『患者に被害を及ぼすことはなかったが,日常診療の現場で“ヒヤリ”としたり“ハッ”とした経験を有する事例』とされる。扁桃周囲膿瘍の診療のリスクマネジメントにおいては,診断,穿刺,切開術の手技と起こりうるアクシデント,インシデント,再発の可能性を含めて熟知し,事前に十分なインフォームド・コンセントを行うことが必要である。
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