連載 手術・手技シリーズ
⑨扁桃周囲膿瘍の穿刺・切開
長舩 宏隆
1
1東邦大学医学部第1耳鼻咽喉科学教室
pp.717-723
発行日 2001年9月20日
Published Date 2001/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902427
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はじめに
扁桃周囲膿瘍は耳鼻咽喉科医が取り扱う口腔咽喉頭領域における炎症性疾患のうちでも,頸部の深部間隙まで炎症が波及するために,その症状の激しさでは最も重篤な疾患の1つであるといえる。耳鼻咽喉科医にとっては比較的遭遇しやすい疾患であり,特有の症状と局所所見より診断は容易であるが,しかし他科の医師にとっては必ずしもそうではなく,抗菌剤の高単位投与を施行しても症状の改善がほとんど認められず紹介され来院することがよくある。自潰するか穿刺や切開排膿すれば急速に症状は改善するが,その反面,診断と治療のタイミングを失うと縦隔洞膿瘍などの重篤な合併症を引き起こすこともある。特に糖尿病や肝機能障害などの基礎疾患などがあるとその危険性は増大するようである。
穿刺や切開,排膿は外来で容易に施行でき排膿さえすれば通常は入院の必要もなく,抗菌薬などの投与をしながら通院加療が可能である。しかし,外来で容易に施行できるがゆえに,ときに重篤な合併症を引き起こす危険性があり,やはり解剖学的位置関係などを理解し,慎重に施行すべきである。
以下に穿刺と切開・ドレナージの手技や注意点などについて述べる。
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