特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅲ.診断・治療をマスターする
9.扁桃炎・扁桃周囲膿瘍
関 伸彦
1
,
氷見 徹夫
1
1札幌医科大学耳鼻咽喉科
pp.259-263
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101855
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Ⅰ 病態・病因
1.概念
扁桃は,乳幼児期には外来抗原認知のための誘導部位として働く免疫器官であるが,細菌感染のターゲットにもなる1)。口蓋扁桃にみられる陰窩には細菌塊が認められ,リンパ上皮共生という特異な構造をとっている。また,この陰窩上皮において,粘膜上皮細胞の機械的バリアであるタイト結合の断裂を思わせる構造を認める。これらの構造は,抗原や病原体を粘膜下に進入させ,抗原認知には有利に働くが易感染性となり,扁桃は感染臓器としての側面をもつことになったと推測される2)。
扁桃の急性炎症は,日常診療で頻繁に遭遇する疾患であるが,炎症が扁桃に限局することはほとんどなく,通常の上気道感染などに伴う咽頭炎を併発している。このため,急性咽頭・扁桃炎という呼称が一般的になっている。さらに,炎症が扁桃周囲に波及して扁桃被膜と咽頭収縮筋膜との間に膿瘍形成したものを扁桃周囲膿瘍という。
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