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8月の最後の週に中国へ行ってきました。今まで学会などで誘いはあったのですが,何となく足を踏み入れることはありませんでした。今回は,上海とそこから約200キロ離れた杭州を訪問しました。上海は2,000万人の人口を抱えているとのことで,中心部に100階建ての森ビルがそびえて立っていました。ソウルと異なり,看板などが漢字で書かれているので,最近の略字を除けば意味がわかり,初めての都市であるにもかかわらず,違和感はむしろありませんでした。杭州の人口も850万人の大都市だそうで,ここも上海と同じく新しい建物があちらこちらで建っていました。大変な勢いを感じました。上海も杭州も成田から3時間弱の飛行で行ける距離で,言葉は違っても,顔も字もそれほど違いがないので,つい日本人と同じような感覚で話をしてしまいます(もちろん通訳を介してですが)。ちなみに,杭州市にはいわゆる富裕層が多く住んでいるそうです。しかし,実際には日本人と中国人では,その思考の基になる背景は全く異なることに注意を払わなくてはなりません。われわれが外国人と話をするときには,それぞれの背景を考慮しながら話をするわけですが,その程度の考慮ではなく,もっと慎重な考慮が必要であることを感じました。
杭州の病院を案内してもらったとき,外来の壁には○○主任医師(教授など)は○○元,○○副主任医師は○○元,というように診察料が明示されています。それなりの医師に診てもらいたいなら,それなりのお金を出しなさいというわけです。たとえれば前述のような背景が常識である人と,日本のような環境で育った人が話をすることになるわけですから,当然のこととして,話にも食い違いが出てくるでしょう。そこで,話が食い違っているという認識があれば問題ないのですが,その認識がない場合にはとんでもないことになるのは想像に難くないと思います。
本誌では,そのような食い違いのある論文はみられません。しかし,稀に思考の背景が編集子とは異なるのではないかと思われるような投稿論文を査読することがあります。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医同士ですので,そのようなことがないような論文の投稿をよろしくお願いします。
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