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本誌は,優れた症例報告が多く掲載されていることで広く認知されています。一方,英文誌の多くは,いわゆるoriginal paperを主として扱っているものが多く,case reportは雑誌の後のほうに掲載されるのが一般的です。むろん,このような欧文誌の編集方法に異論を唱えるものではありませんが,症例報告を重視した雑誌があっても不思議はないとも思います。良い症例報告は日常臨床に役立つ,あるいは手助けになるばかりでなく,将来進むべき道筋や研究に関するアイデアや指針を与えてくれます。フランスの神経学は伝統的に臨床の場を大切にしており,多くの優れた研究や新しい知見が症例報告から得られていることは歴史が示しているところです。
本邦では,優れた症例報告が本誌をはじめ,他の耳鼻咽喉科関係雑誌に掲載されています。しかし,これらは残念ながら日本の主として耳鼻咽喉科医のみが知るところであり,諸外国では全く認知されていません。もちろん,すべての症例報告を英文雑誌に発表する必要はありませんが,世界に発信してよい内容の症例報告も少なくないと思います。そこで,これらの優れた症例報告を,本誌の英語版というべき雑誌を新たに刊行し,世界に発信したらどうかというアイデアがあります。わざわざ,そのような面倒なことはせずに,既存の英文誌,例えば,Acta Oto-laryngologicaやLaryngoscope,あるいはAnnals of Otology Rhinology & Laryngologyなどに投稿すればよいのではないかという意見もあると思います。しかし,しばしばこれらの雑誌では,当然のことかも知れませんが,その受領(掲載)は公平とは言いながら,自国あるいは関係国からの投稿論文には甘く,外国からの投稿には辛いのが一般的です。特に,英語を母国語としない日本人にはなかなかハードルが高いのが現状です。また,同時にその投稿先を外国雑誌にのみ頼っているのは,文明国,科学大国の日本としては寂しい限りです。
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