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あとがき
八木 聰明
pp.794
発行日 2009年10月20日
Published Date 2009/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101507
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衆議院議員選挙は,民主党の圧倒的勝利という結果で幕を閉じました。長く続いて,多くのほころびが露呈した自由民主党の政治に,国民がノーといい,新しい方向性を選択した結果と解釈するのが最も素直な見方でしょう。国民の多くは将来を睨んで前向きに考えたからこのような投票行動を行ったのでしょうが,いわゆる3大新聞やテレビをはじめとする多くのメディア関係者は,どうも後ろ向き思考が好きなようです。過去の自由民主党の政治をある程度批判しながらも,同列に今後の民主党の政治の不安ばかりを指摘していて,これを機会に新たに日本の未来を創造しようというような論説は全くありません。ついこの間行われた高校野球でもそうですが,何かが終わると反省会をするというのが日本人の特性かもしれません。反省はよいのですが,それはあくまでも次のステップに生かすためのものでなくてはなりません。つまり,振り返ってみることは重要ですが,それに続く前向き思考がなければ振り返りは何の役にも立ちません。
論文を書くこともそれに似ていると感じています。例えば,症例報告をするのは,その症例を通して新たに学んだことなどをまとめることによって,著者が将来同じような例に遭遇した場合に,より的確な診断や治療を行うことにつながるはずです。また同時に,そのような例に遭遇していないであろう多くの読者に,論文を通して自分と同じ経験をしてもらうためにも重要な意味をもっています。すなわち,症例報告や統計的な症例検討は,決して後ろ向きの作業ではなく,きわめて前向きな作業であるということです。
そのような意味でも,多くの優れた症例報告や臨床統計の論文の投稿を期待しています。
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