特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に
各論
2.音声言語ならびに嚥下 3)嗄声
馬場 均
1
,
廣田 隆一
1,2
,
高ノ原 恭子
2
1京都府立医科大学耳鼻咽喉科学教室
2京都府立医科大学附属病院リハビリテーション部
pp.135-140
発行日 2007年4月30日
Published Date 2007/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101092
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Ⅰ はじめに
音声障害は声の正常範囲からの逸脱1)であるが,声の正常範囲を定義することは困難であるため,声の質,ピッチ,強さが,個人のもつ声の多様性を考慮に入れたうえでの標準から逸脱した状態2),とされる。音声障害は喉頭の発声機能の障害である発声障害と,声道の伝達機能の障害である共鳴障害に大別され,発声障害は発声器官に器質的病変が存在する器質性発声障害と,器質的病変のない機能性発声障害に分類される3)。
嗄声は発声障害の主体をなすもので,音色の障害とされる。日常臨床では,嗄声をGRBAS尺度による聴覚印象4)で評価することが一般的である。
嗄声に対する治療法は,保存的治療と外科的治療に分類され,保存的治療には薬物療法と音声治療がある。
保存的治療である音声治療は,発声行動の再調整法とされており,患者に自分自身の不適切な発声方法を理解させることと,それを自己修正させ効率的な発声方法を習得させることを目的に行われる5)。その適応については,音声治療が治療法として第一選択である場合(不適切な発声行動に起因する音声障害など),外科的治療が不可欠ではなく,音声治療による症状の軽減が期待できる場合(一側性声帯麻痺や声帯結節のなかで発声障害が比較的軽度の症例),外科的治療の補助的効果(音声外科手術後の補助治療など),外科的治療に困難や限界がある場合が挙げられる2)(表1)。音声治療は,生活指導を中心とした間接訓練と実際の発声方法を変える直接訓練に大別されているが5),間接訓練と直接訓練は,独立したものではなく相補的な関係にある。
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