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Ⅰ.はじめに
1994年のposition statementでは,universal newborn hearing screening(難聴の全数スクリーニング)と呼ばれていた新生児スクリーニングが,2000年のposition statementで特にearly hearing detection and intervention(EHDI:難聴の早期発見と介入)といい表されるようになってすでに久しい。Position statementにおけるこの呼び方の変更は,難聴の場合には早期の『発見』だけではその対策が決して完結しないことを念頭に置いた表現であり,それと同じ重要性をもって『介入』について考える必要性を理念として改めて示したものである。
地域における新生児聴覚スクリーニングに対する取り組み(district-based newborn hearing screening)を考える場合,こうした介入までを見越した対策を考えることが前提となるために,そもそも病院を基本単位としたスクリーニング(hospital-based newborn hearing screening)と比べればはるかに幅広い問題点を対象としてプランニングする必要がある。
段階としてその問題を大別すると,①スクリーニング前の啓発,②スクリーニングそのもののシステムと効率性の検討,③スクリーニング後のサポート体制,④スクリーニング後の確定診断のシステム,⑤診断後の療育,⑥そしてそれぞれの部門のシームレスな連携,および⑦事業としての評価とそれを踏まえた『持続可能なサービス』を提供するシステムが必要であるといえる。
岡山県では,全国に先駆けて地域レベルでの新生児聴覚スクリーニングを実現させてきた実績がある。すなわち,岡山県では,県と契約を結んだ47の産科医療施設が,それぞれに自動ABRによる聴覚のスクリーニングを行っている。これでは,入院中に必ず2回以上のスクリーニング検査を行い,そのうえで繰り返しリファーの結果となったものを『要精密検査』として,精密聴力検査機関へと紹介するシステムになっている1)。この後,この情報は同時に岡山県に連絡され,さらに保健師に連絡されて,『要精密検査』の段階で保健師の訪問指導が行われる形になっている(図1)。なお,こうした情報を県および匿名化したうえで2次的に使用することについては,スクリーニングの同意取得時に文書で同意を得ている。
本稿では,これまでの経験を含めて地域における新生児聴覚スクリーニングシステム確立のために必要なポイントについて,特に行政面でのサービスとサポートの体制作りについて整理してみたい。
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