連載 地域づくりのためのメンタルヘルス講座・7
地域での取り組みを教えて下さい
野口 正行
1
1岡山県精神保健福祉センター
pp.802-805
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102240
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はじめに
近年,市町村が精神障害の相談の窓口になってきているが,他にも多様な業務が求められている上,市町村によっては精神障害に対する知識やスキルが十分とは言えない場合もある.保健所が市町村をカバーをすることが求められているが,保健所も業務の多様化と人員の減少で,こうしたことも困難となっている1,2).
精神保健福祉センターも県全域の専門機関として保健所の支援に当たることになっているが,十分な人員が手当てされていないため,本来の働きが十分にできているとは言えない3).ここで出現している状況は,市町村は多様な業務の負担に加えて,慣れない精神障害の対応を迫られ,保健所も精神保健福祉センターもマンパワーの問題もあり,それを十分にカバーできない状態がある.
医療機関に勤めていた者の目からすると,この事態はかつて「医療崩壊」と呼ばれていたこと(今はかつてほど騒がれなくなったが,事態がどれくらい改善したかは疑わしい)の保健機関版,いわば「保健崩壊」であるように映る.つまり医療に倣って保健が崩壊しつつあるということだ.これをこのまま放置しておけば,精神科救急への負担が増大することで「医療崩壊」を増悪する,あるいは地域でも病院でも受け止め切れない精神障害者が「難民化」する,という事態も起こりうる.
地域で精神障害者をサポートできるためには,現在曖昧な位置づけのまま崩れつつある保健の再強化,市町村や保健所がきちんとした役割を果たせる体制を作ることが必要であろう.こうした問題意識の下,本稿では地域のサポート体制をどのように整備するか,について論じたい.
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