特集 補聴器に関する最近の変化
4.補聴器と人工内耳の関係
牛迫 泰明
1
,
東野 哲也
1
1琉球大学医学部医学科高次機能医科学
pp.461-465
発行日 2005年6月20日
Published Date 2005/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100149
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Ⅰ.はじめに
補聴器も人工内耳も難聴者の聞こえを回復する機器である。しかし,仕組みと働きは大きく異なり,前者は音声の拡声器として,後者は聴神経の電気刺激装置として働く。特に体外部に装用するだけの補聴器と違って,人工内耳は手術で内部装置を耳内に埋め込む必要がある。そのため,残念なことに難聴者は一時的に人工内耳による聞こえを体験することはできない。内部装置の埋め込みにより内耳が傷害され,元の聞こえを失う可能性が高いからである。補聴効果がすでに少ない難聴者のみが人工内耳の適応となるゆえんである。
わが国では,1998年に日本耳鼻咽喉科学会により人工内耳の適応基準が見直され,新たに制定されている(表1)。この基準では,人工内耳の適応者は聴力および補聴器の装用効果について,純音聴力は両耳とも90dB以上の高度難聴者で,かつ補聴器の装用効果の少ないものと示されている。これは両耳の聴力が90dB以上の高度難聴者から人工内耳と補聴器のいずれかを選択できることを意味している。わが国においては,ここに補聴器と人工内耳の間の一線がある。
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