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人工内耳医療の動向―両側人工内耳と補聴器併用型人工内耳
Bilateral cochlear implantation and combined electo-acoustic stimulation:current concepts
東野 哲也
1
Tetsuya Tono
1
1宮崎大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科
pp.267-274
発行日 2010年4月20日
Published Date 2010/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101569
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Ⅰ はじめに
1994年に保険医療として認可されたわが国の人工内耳医療であるが,2000年代には高度難聴者に対する医療として既に定着した感がある。人工内耳が環境音や音声認知を(再)獲得させ,言語習得や教育,社会参加への道筋を開いた功績は,まさに近代耳科学がもたらしたドラマであった。ただ,一側のみの人工内耳手術を原則としてきた医療政策は,『片側聾』という状況を患者に強いることになり,騒音下での聞き取りや音の方向感に関しては不満を残しているのが現状である。このことは,あえて『良聴耳』を補聴器や未来の難聴治療法のために残し,『非良聴耳』に人工内耳が埋め込まれた高度難聴患者においてはより深刻な問題となっている。
わが国では日本耳鼻咽喉科学会の主導で人工内耳適応基準が定められ,1998年および2006年の改正を経て成人例,小児例とともに90dBというレベル設定で今日に至っている。本基準が果たしてきた役割は大きいが,その一方で補聴器装用効果がきわめて不良な難聴患者のなかには,この聴力レベルに達しないからという理由で人工内耳医療を享受でないまま放置されている難聴者もいる。その典型例が高音急墜型感音難聴である。
これらの問題点を解決する方策の1つが両側人工内耳であり,他の1つが補聴器併用型人工内耳である。この2点については,既に本誌2004年の特集『人工聴覚手術の現況』において筆者1)の展望として述べたところであるが,その後この方面の関心が世界的な高まりをみせ,この数年間に報告された研究論文も激増している。自験例を呈示しながら解説する。
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