特集 小児の人工内耳
1.小児人工内耳の適応決定
東野 哲也
1
,
牛迫 泰明
1
1宮崎医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.749-753
発行日 2002年10月20日
Published Date 2002/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902623
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はじめに
小児への人工内耳医療が本格化したのは,米国において多チャンネル型人工内耳が小児に対して認められた1990年以降であるが,その後の普及には目を見張るものがある。先天聾小児の中に数年間のリハビリテーションで驚異的な人工内耳成績を示す例が経験されるにつれ,急速な機種の改良と相まって,世界中で適応の低年齢化が進んでいる。1995年に公表された米国NIHのコンセンサスでは,2歳以上の小児で聴力レベルが両側とも90dB以上,補聴器装用効果が不良なことが基準となっていた。しかし,1999年のFDAのガイドラインでは生後18か月,2000年の新しい機種に対しては生後12か月まで適応が緩和され,ドイツでは生後半年の乳児への埋め込みも行われている。
このように人工内耳手術の低年齢化は世界的な趨勢ではあるが,わが国では1998年に日本耳鼻咽喉科学会が制定したガイドライン(表1)が現時点での耳鼻咽喉科医のコンセンサスとなっている。オージオロジスト,聾学校・通園施設の聴能訓練担当教員など,人工内耳の適応基準についての考え方は必ずしも一致していない部分もあろうが,本稿では耳科医の立場から適応基準に関わる諸問題について論じたい。
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