解説
糖尿病網膜症による血管新生緑内障に関する最初の判決の教えるもの—札幌地裁平成13年8月27日判決全文を読んで
岩瀬 光
1,2
1岩瀬眼科医院
2武蔵野赤十字病院眼科
pp.590-593
発行日 2002年4月15日
Published Date 2002/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907693
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1.はじめに
糖尿病網膜症に伴う血管新生緑内障による失明に関する判決が日本で初めて札幌地裁で出された。血管新生緑内障になった状態で眼科医を初診したものであり,そこまで眼科医に送らずに糖尿病患者を抱え込んでいた内科医の責任ももちろん重大である(臨眼55巻5号(2001年)の筆者論文参照)。けれども,これほど重症であっても眼科医は何らかの対処をし,可能な限り失明を避ける努力をしなければ責任を問われることになる。
本判決では,原告患者側が大学病院への転医を拒んだ事実が重要視された結果,被告医師側の法的責任は認められなかった。しかし,開業医が重症の血管新生緑内障を自分で継続治療をせざるを得なくなった結果,患者左眼が失明にいたり,裁判という法的紛争が起こり,被告医師側も苦労を負わされているとの意味で,「血管新生緑内障の治療をどのようにしたらよいか。またどのように説明し大病院に転医させていくべきか」に関しての重要な教訓になると思い,今回取り上げた。
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