解説
コンタクトレンズによる角膜障害につき医師側の過失を認めた判決の教えるもの―大阪地裁堺支部,平成14年7月10日判決全文を読んで
岩瀬 光
1,2
1岩瀬眼科医院
2武蔵野赤十字病院眼科
pp.68-71
発行日 2003年1月15日
Published Date 2003/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101100
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1.はじめに
本件は,コンタクトレンズ(以下,CL)を購入した原告が,その販売店およびそれに隣接して眼科診療所を開設する医師に対し,販売店従業員や眼科医師の不適切な説明,診療により左眼に角膜混濁や矯正視力低下などの後遺障害が残ったとして不法行為に基づく損害の賠償を求めた事案である。そして,この判決はわが国で初めて,CL販売店と,同店に実質上雇われている眼科医師の双方に過失責任を認めた判決である。
現在,CLの相当量がCL量販店で販売されている(2000年の日本眼科医会報道用資料によると,社会人では24.9%が「CL販売店」で,30.6%が「眼科」で購入となっている)。そして最近ではアルバイト医師ではなく,眼科開業形態を取ることが多くなったとはいえ,実質上CL量販店に雇われたに等しい医師が診療にあたっていることが多い。こうした量販店でのCLによる角膜トラブルが増加している。
他方,ソフトコンタクトレンズ(以下,SCL)の消毒法は従来の煮沸消毒からマルチパーパスソリューション(以下,MPS)によるコールド消毒が主流になってきている。その場合,「これ1本で浸け置きだけでOK」の宣伝で,「蛋白除去」や「こすり洗い」がないがしろになっている事実がある。これによるCLトラブルも増加している。
今回の判決は,こうした背景の中で起こった事件に関するもので,CL量販店やそこに雇われた医師ばかりでなく,CLを扱うすべての眼科医師にとっても警鐘となるものだと考えられる。
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