特集 緑内障Today
Ⅴ 緑内障手術をめぐるControversy
血管新生緑内障—マイトマイシンC併用線維柱帯切除術
沢口 昭一
1
Shoichi Sawaguchi
1
1新潟大学医学部眼科学教室
pp.182-184
発行日 1996年10月20日
Published Date 1996/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410905128
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はじめに
血管新生緑内障は眼内虚血病変の際に生じる虹彩ルベオーシス,あるいは隅角ルベオーシスが原因となり生じる難治性の緑内障であり,これまでその治療成績はほぼ絶望的なほど悲惨であった。この極めて難治な緑内障に対して代謝拮抗剤を併用した濾過手術が注目を浴び始めたのは,Heuerら1)が5-fluorouracil (5-FU)を血管新生緑内障に対して用い,その結果を報告してからである。特に最近,この血管新生緑内障が注目されてきたのは,本疾患の原疾患としては網膜中心静脈閉塞症,糖尿病性網膜症,頸動脈疾患等が挙げられるが,近年糖尿病人口の激増とともに,特に糖尿病性網膜症に合併して発症する患者が著しく増加していることによる。
市辺ら2)もHeuerらと同様に代謝拮抗剤の5-FUを併用した線維柱帯切除術を血管新生緑内障に対して施行し,その良好な手術成績を報告した。しかしながら,5-FUを併用した濾過手術の問題点はすでに指摘されているように,術中,術後数回にわたって結膜下注射を行わなければならず,また初心者では5-FUを漏らしたりして容易に角膜障害を引き起こし,以降の5-FUの追加が制限されてしまうことである。近年,この代謝拮抗剤の5-FUに代わり,抗腫瘍性抗生剤であるマイトマイシンC(MMC)の術中投与が注目を浴び,原発開放隅角緑内障をはじめとする種々の緑内障の線維柱帯切除術に併用され,その手術成績が報告されてきている3,4)。このMMCの利点としては術中1回の投与で済み,また5-FUと異なり角膜障害を生じることが圧倒的に少ないということである。
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