Siesta
骨とカルシウムの出入り
中村 利孝
pp.52
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410904023
- 有料閲覧
- 文献概要
骨は体重を支え,形を維持する器官である。この場合,骨の形とは外形である。出ているところは出て湾曲したところは湾曲したあの微妙な骨の外形である。しかし,同時に骨は全身の細胞の要請に応じてミネラルを出入りさせ,体液中のカルシウムのバランスを維持している。カルシウムは細胞の機能に必須である。全身の細胞のカルシウムの役割は,栄養素というよりも伝令(メッセンジャー)として細胞間や細胞内での小器官の間での情報を伝えることにあるようだ。カルシウムは全身を早い速度で駆けめぐり,さまざまな機能を調節している。
このような素早い動きをするカルシウムの平衡を,骨のようにどっしりとした臓器が微妙に調節しているとは,外見をみている限り想像もつかない。確かに,全身の要請に応じてカルシウムを出入りさせるとはいうものの,一体どこでそんなことをしているのか?だいいち素早い動きをするカルシウムの要請に応じていたら,骨の形が常に変化しているはずだ。骨の形がそんなに早く変化していたら,身体を支えるという働きが維持できないではないか。
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.