今月の主題 カルシウム代謝と骨
Editorial
カルシウム代謝と骨
松本 俊夫
1
1東京大学医学部・第4内科
pp.1474-1475
発行日 1988年9月10日
Published Date 1988/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221820
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カルシウムおよび骨代謝異常症は,日常臨床の中でも決して稀な疾患ではなく,米国Mayo Clinicのように代謝内分泌疾患の中では糖尿病に次ぐ患者数が存在する施設もある.しかしながら,その存在を疑わないで診療したために,見落とされてしまう場合も多い.この場合,問題となるのは血清あるいは尿中のカルシウムなどを測定しなければ,例えば直接の死因となった腎不全の原因が不明のまま,カルシウム代謝異常症の存在に全く気づかれないで終わってしまうということである.カルシウム代謝異常症は,循環器疾患や呼吸器疾患患者のように,一瞬の判断が患者さんの生死に直接関わってくるような場合は少ない.しかしながら,その存在を的確に診断し,必要な治療を行うことにより,その後にもたらされる多くの障害を予防しうるとともに,前述のごとく,場合によっては致命的となる合併症を未然に防止することが可能である.そのような意味でどのような臨床に携わろうとも常に念頭に置く必要のある疾患の一つであろう.
一方,この分野における基礎的研究に目を向けてみると,骨およびカルシウム代謝に関する研究は,ここ数年来目醒ましい進歩を遂げつつある.その結果,骨芽細胞による骨基質蛋白の生成および骨石灰化の機構,骨芽細胞による破骨細胞機能の調節,更には破骨細胞の形成過程,などの謎が急速に解き明かされつつある.
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