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はじめに
入浴は,我々の生活リズムに幼少期から完全に浸透しており,身近な行為の一つである.入浴の目的は,身体の衛生,温熱効果はもちろん,一日の疲れを癒すとともに,楽しみを得ることにある.
さて,リハビリテーションの立場から入浴を考えると,浴槽の出入りや身体を洗ったりする,いわゆる入浴動作と,浴槽,洗い場,脱衣場などのいわゆる風呂場の2つの問題を考えてみなければならない.まず入浴動作をみると,脱衣,洗い場までの移動,湯のくみ出し,洗体,浴槽への出入り,着衣など大きく分けられる.これを動作や運動の面からみれば,身体の移動から手の巧緻動作まで,肩や股関節の全ての方向への運動から,足の裏を洗う時には,足の内反まで要求される.このうち,浴槽から出て,身体を洗うという動作は,西欧諸国にはないので,日本的日常生活動作として大変重要な問題である.この一連の動作も健康人にとっては別段苦にならない.しかし,手足に障害のある者にとっては,このうえない困難な動作の一つである.
次に風呂場の問題である.大都会でも,ほとんどの家に風呂が持てる時代になったとは言うものの,銭湯に行かざるを得ない者も少数ではあるが存在している.数年前,川崎市で車椅子使用者の入浴をある銭湯が拒否した事件が起こった.この問題はここでは論議するスペースがないが,身障者にとって,共同浴場は決して快適なものではないはずである.
一方,たとえ家庭に浴室を持っていても,十分なゆとりのあるスペースがないのが現状である.さらに,我が国では浴室や浴槽,それらの組み合わせなども多様なことが特色である.このようなことが,身障者の入浴を考える上で,問題をより複雑にしている.
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