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はじめに
最近,老人性円板状黄斑変性症などの黄斑の網膜下病変に対して,硝子体手術を用いることによって外科的にapproachすることが可能になってきた。その背景には,硝子体手術における手術器械や手技の進歩,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA),液体パーフルオロカーボン(PFC)などの臨床応用といった技術的な展開があるが,このような黄斑の網膜下(以後黄斑下)の病変に対して有効な治療法がなかったことも大きく関与している。
具体的には,中心窩に存在する網膜下新生血管膜(以後中心窩下新生血管膜)を経網膜的に除去したり,網膜細動脈瘤や外傷などいくつかの原因によって生じる網膜下血腫を除去することであるが,こういった黄斑下での外科的操作を sub—macular surgery1)(黄斑下手術)という新しい名称で呼ぶことができる。理論的には,中心窩下新生血管においては,レーザー光で中心窩の網膜を破壊することが避けられない治療より,中心窩の網膜をほとんど障害せずに直接新生血管が除去できるほうが理にかなっているし,また黄斑下の血腫では,自然吸収を待つより,不可逆性の網膜障害が生じる前に血腫を除去したほうがより良好な視機能を保持できるはずである。しかし,現在のところこういった手術はpilot studyの域を出ておらず,長期にわたる自然経過との比較,あるいはレーザー光凝固などの他の治療との比較など行われていないのが現状である。したがって現時点では,この黄斑下手術がひとつの治療法としては確立しているとは言い難いが,今後適応疾患や手術時期などに関してさらに検討を加えていけば,黄斑疾患を取り扱う際に選択すべき治療のひとつとして強力な武器になる可能性を有している。
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