増刊号 実戦 メディカル眼科治療アップデート
メディカル眼科治療 各論
Ⅱ 眼窩疾患およびその周辺部領域
トピックス
眼科領域悪性腫瘍に対する重粒子線治療
辻 比呂志
1
1量子科学技術研究開発機構 QST病院
pp.174-175
発行日 2019年10月30日
Published Date 2019/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410213338
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はじめに
重粒子線治療は,体内での優れた線量集中性と高い生物効果を特徴とする放射線療法であり,眼科領域の悪性腫瘍のように重要臓器に近接した病巣の治療において,特にその優位性が発揮される。
重粒子線治療の適応となる眼科領域腫瘍としては,脈絡膜悪性黒色腫と涙腺癌をはじめとする眼窩腫瘍がある。脈絡膜悪性黒色腫は,頻度が高い欧米では陽子線治療が普及し,手術,小線源療法と適応を分ける形で市民権を得ている。放射線医学総合研究所でも1986年から陽子線による治療を行ってきたが,2001年からはさらに良好な成績を目指して新たに建設された重粒子線治療装置(HIMAC)を用いた重粒子線治療へと移行した。
眼窩腫瘍については,特に通常の放射線が効きにくい腺癌,腺様囊胞癌が重粒子線治療の良い適応と考えられるため,2001年に涙腺癌に対する臨床試験を開始した。
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