Japanese
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特集 悪性脊椎脊髄腫瘍に対する治療
重粒子線による悪性脊椎肉腫に対する治療
Carbon-ion Radiotherapy for Spinal Sarcoma
今井 礼子
1
,
辻 比呂志
1
Reiko IMAI
1
,
Hiroshi TSUJI
1
1国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所病院
1Hospital of the National Institute of Radiological Sciences, Quantum and Radiological Science and Technology
キーワード:
粒子線治療(charged particle therapy)
,
重粒子線治療(carbon-ion radiotherapy)
,
脊椎肉腫(spinal sarcoma)
Keyword:
粒子線治療(charged particle therapy)
,
重粒子線治療(carbon-ion radiotherapy)
,
脊椎肉腫(spinal sarcoma)
pp.689-693
発行日 2017年7月25日
Published Date 2017/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200670
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重粒子線治療とは
重粒子とは原子番号2(ヘリウム)以上の粒子のことを指し,重粒子線治療に用いられるのは炭素イオン線である.重粒子線の特徴は,イオン粒子としての性質(ブラッグピーク)をもっていることである.高速の荷電粒子は物質内を通過するとき電離を起こしながら次第にエネルギーを失っていくが,停止する直前で最大エネルギーを放出しその後エネルギーはほぼゼロになる.この現象をブラッグピークといい,発見者の名前にちなんでつけられた.つまり,体表から重粒子線が進入後,ターゲット(がん病巣)に到達するまでは,周囲(正常組織)に付与する線量は低く,ターゲット部分で最大線量となり,ターゲットの向こう側はほとんど照射されない(図1).この性質を活かして,重粒子線治療ではがん病巣に大線量を照射することができる.陽子線もブラッグピークをもつ荷電粒子線であるが,違いは,炭素イオン線のほうが単ビームでみれば半影(ビームの外縁のぶれ)が少ないシャープなビームであることであり,ビームがシャープなほうが脊髄や食道などのリスク臓器を避ける場合には有利である.もう1つの陽子線との違いは,生物学的効果(殺細胞効果)が高いことである.炭素イオン線は,ブラッグピークでは周囲を電離させる力(線エネルギー付与〔linear energy transfer:LET〕)が高くなる.がん細胞の中心部分の低酸素細胞は放射線抵抗性であるが,炭素イオン線はこのような細胞に対しても有効であることが実験系で明らかになっている.
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