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臨床眼科9月号をお届けします。本号は第68回日本臨床眼科学会講演集の第7回目となります。症例報告には読んで頭の片隅に置いておけば類似の症例に出会ったときにとても参考になるものがあります。ほんの一部を紹介しますと,森秀夫氏らの妊娠糖尿病例がインスリン強化療法に伴って一過性の網膜症の悪化をみた症例,薫一帆氏らのUAIM症例,脇屋匡樹氏らのサルコイドーシスで多発性脈絡膜肉芽腫を示した症例,徳永義郎氏らの肥厚性硬膜炎へのステロイド治療後に感染性脳症を発症した症例などはいずれも大学病院などの基幹病院で眼科診療を行ううえで見逃すことのできない症例です。それから水澤裕太郎氏らの重症未熟児網膜症に対する抗VEGF併用療法に関する報告も時代の流れを感じさせる論文かと思います。
連載では周藤真氏らによる「スマートフォンを用いた前眼部および眼底写真」が注目です。本号ではスマートフォンによる前眼部撮影と眼底撮影のノウハウを実際に即してわかりやすく記載していただきました。世の中,大型PCからノート型の小型PCへ,そしてスマートフォンが単なる携帯電話とカメラから情報端末へと徐々に移って行く流れの先には,スマートフォンがいずれPC機能を持つようになるだろうと予想されています。眼科領域ではスマートフォンが医療機器としての機能を持つようになるというのも時代の流れでしょうか。それから村木早苗氏の小児心因性視力障害についての大変わかりやすい解説も見逃せません。眼底に異常のない視力障害に対して,心因性なのか視神経や錐体視細胞の器質性疾患なのかに関して頭を悩ませる症例に多く出会います。私なぞはわからなくなると大学の先輩である清澤源弘先生のご高診を仰ぐことが多いのですが,村木氏の解説により小児心因性視力障害とはどのようなものなのか,認識を新たにして日々の診療に応用したいと思います。
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