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はじめに
ぶどう膜は,血流が豊富で網膜外層の栄養も担っている重要な組織である。ぶどう膜炎はintraocular inflammationともいわれ,ぶどう膜に限らず眼球全体の炎症の総称であり,特に後眼部炎症では網膜や視神経の障害により視機能が低下する。脈絡膜炎症が中心であるVogt-小柳-原田病(原田病)のほか,網膜血管炎を起こすベーチェット病のぶどう膜炎でも脈絡膜に炎症細胞浸潤を認めるといわれており,ぶどう膜炎における脈絡膜の評価は重要と考えられる。
脈絡膜の観察は,超音波断層計による眼球後壁の観察やインドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:IA)による脈絡膜循環状態や脈絡膜の炎症の検出が行われてきたが,詳細な構造の観察や量的な評価は困難であった。その後,非侵襲的に眼底血流が測定可能なlaser speckle flowgraphy(LSFG)が報告され,原田病1,2)やpunctate inner choroidopathy3)で脈絡膜の血流解析がなされている。
2009年に報告されたenhanced depth imaging optical coherence tomography(EDI-OCT)の撮影技術により,非侵襲的に繰り返し脈絡膜を観察することが可能になった。さまざまなぶどう膜炎の活動期には脈絡膜厚が有意に肥厚することが報告された4〜6)。また罹病期間が長く再発を起こした前部ぶどう膜炎では非活動期の脈絡膜厚は正常眼より有意に減少することがわかった7)。さらに,Branchiniら8)は,EDI-OCT画像を用いて脈絡膜血管の形態的な特徴をもとに外層(大血管層)と内層(choriocapillarisから中血管層)に分け,層別に厚みを測定する方法を報告した。
最近,脈絡膜構造を定量的に解析するため,Sonodaら9)はEDI-OCT画像を2階調化する方法を報告した。脈絡膜は管腔と間質で構成され,EDI-OCTの画像では管腔は黒っぽく,間質は白っぽく描出される。ImageJ画像ソフトに内蔵されたNiblack法を用いてEDI-OCT画像を2階調化し,管腔領域と間質領域に分離し各面積を測定する。この方法によって正常眼の日内変動や中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC),原田病などで脈絡膜厚と管腔領域との関係が報告された10〜13)。CSCでは脈絡膜全層の管腔比は有意に増大するが,脈絡膜内層と外層にわけて2階調化し解析したところ,内層では管腔比が減少し外層では増大していた。ぶどう膜炎でも各層における構造変化の解析が進んでいくものと思われる14)。
代表的なぶどう膜炎疾患についてEDI-OCT画像による脈絡膜観察を中心に最近の知見を概説したい。
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