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新型コロナウイルス禍でさまざまな社会活動が制限されつつも,これまでの伝統的習慣や行事が省略・簡素化されながら新しい形態に移行しているのもひとつの時代の流れでしょうか。今年初め頃まではマスクと言えば白いものという固定観念がありましたが,今ではさまざまな色や模様の入ったものまであり,それぞれが個性を主張しているかのようです。最初はちょっと異様に思いましたが,次第に見る側も順応させられて違和感なく見られるようになりました。
ところで,臨床眼科9月号の「今月の話題」は北里大学神谷和孝教授による「AIの角膜形状解析への応用」です。スリットランプで人間が定性的に観察したたけでは解析不可能な部分について,角膜形状解析装置やさらには前眼部OCTから出力されるさまざまなパラメータを人工知能(AI)が解析し,円錐角膜の診断に応用できる時代になってきたことが解説されています。AIによって人間の仕事の多くが取って代わられるようになり,やがて医師自身による診断が不要になる時代が来るのではと危惧される向きもありますが,現実の日常臨床の場では診断に苦慮する場面は実に多いものです。例えば,炎症性の病変を診たときに感染性なのか非感染性なのかの判断は,抗菌薬かステロイドかの異なる治療手段の選択を迫られますので,編集子などはその都度,目を皿のようにして所見を捕まえることを余儀なくされます。このようなときにAIの判定がもしあれば,我々もより安心して診療できるようになるのではという期待があります。おそらく,そのようなAI診断なら我々の順応も早いのではないでしょうか。今月号では,そのような診断に苦慮させられそうな症例の報告も学会講演原著として数多掲載されています。通読するだけで読者諸氏の診療レベルがアップデートされることは間違いなしでしょう。
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