- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
臨床眼科3月号がお手元に届く頃は,新型コロナウイルスに対するワクチン接種が日本でもそろそろ開始される頃でしょうか。昨年の緊急事態宣言の後に一時的に下火になったかと思われた感染者数ですが,その後の第2波と第3波の感染者数の大幅増加をみると,人間の油断と楽観がコロナウイルスに上手くつけ込まれているかの様相を呈しています。逆を言えば,人間は他人との交流や社会との関係性をこよなく愛する種族なのであるとも言えるのではないでしょうか。それが感染症で制限されることが多くの人にとって苦痛であることは新発見でした。そして,なぜか今冬はインフルエンザの流行の声を聞かないのも,マスク着用や手指洗浄,三密回避といったコロナ対策がインフルエンザにも特効的に予防効果があることなのかもしれません。そう言えば,EKCも私は1年以上お目にかかっていませんが,同様な傾向があるのでしょうか。
その辺の解析は専門家にお任せするしかありませんが,一方で本誌に目を転じますと今月も新発見が満載です。佐々木洋教授の第74回日本臨床眼科学会特別講演の「白内障:予防と治療への新しいアプローチ」では白内障が今後の温暖化による外気温の上昇とともに発生率が上昇する可能性が論じられていますし,白内障発症を予防できるかもしれない薬物の研究も進んでいるとのことで,それが実現すれば世界の失明者数の大幅な減少が見込めることになります。連載「国際スタンダードを理解しよう! 近視治療の最前線」では,稗田牧先生の「小児の近視の進行抑制」と題するアトロピン点眼による近視進行予防効果の解説も非常に興味深い内容です。小児期での近視進行予防は緑内障,網膜剝離,黄斑変性,黄斑萎縮など,壮年期や老年期の眼疾患の予防にもつながります。両者はいずれも「俯瞰的,総合的」な視点から見て,疫学上非常に重要な意義のある課題です。さらに,「Clinical Challenge」も頭の体操と知識の整理には格好の症例が記載されており,毎月眼が離せそうにありません。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.