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炭酸脱水素酵素阻害による血液疾患,他
樋田 哲夫
1
1杏林大
pp.1256-1258
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210546
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Mogk LG & Cyrlin MN : Blood dyscrasias and carbonic anhydrase inhibitors. Ophthalmology 95 : 768-771, 1988
炭酸脱水素酵素阻害剤の内服に起因すると思われる再生不良性貧血,血小板減少性紫斑病,溶血性貧血などの血液疾患の報告が増加しており,1985年にはFraunfelderが79例をまとめている.このことから同剤内服患者に定期的に血液検査を行うべきという意見がある.著者らは81名の開業医,66名の緑内障専門医,40名の大学関係の眼科医を対象に血液検査を定期的に施行しているか否かのアンケートを行った.期間はまちまちであったが各々13.6%,18%,5%が施行していた.興味深いことに定期的検査を推奨した症例報告の著者6名のうち3名が施行を止めていた.同剤によるこの全身合併症発症のメカニズムは不明だが,特異体質によると考えられておりまた投与量とは関係がないとされている.内服中止によって症状が軽快することは多いが保証はない.発症の時期,進行度もまちまちである.すべての内服患者に検査を行うことは莫大な経費を必要とする.血液検査が本合併症の予防に役立つという考えはむしろ安易であり,患者の症状に注意することのほうがより重要である.
確かに全ての患者に検査をすべきである,というは易しである.本論文のような視点からの報告は本邦では出てこないのではないかと思われる.学術論文の専門分野以外への影響を考える時興味深い.
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