けんさアラカルト
飲酒とアルデヒド脱水素酵素
原田 勝二
1
1筑波大学社会医学系
pp.530
発行日 1993年6月1日
Published Date 1993/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901600
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少量のアルコール摂取でも,顕著な不快症状(顔面および全身の紅潮,心拍数と呼吸数の増加,悪心,頭痛,嘔吐など)を起こす人がいる一方,多量のアルコール摂取でも平然としていられる人がいる.この原因はアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の多型(活性型と不活性型)に基づくことが,筆者らにより解明された.要約すると,ALDH2 mutant遺伝子をヘテロもしくはホモ接合型として持つ人はnormal遺伝子をホモ接合型で持つ人より,エタノール代謝産物であるアルデヒドを酢酸へ酸化する能力が劣り,そのため生体内に増加してきたアセトアルデヒドの強力な薬理作用により,不快症状が出現するのである.ALDH2 mutantとnormal geneとの違いは,ALDH2遺伝子を構成するDNA塩基のうちエクソン12の部分1置換が原因となり,これがアミノ酸の置換となって現れ,最終的にはペプチドの立体構造に影響を及ぼし,活性を示すものと示さないものの2型の出現につながる.活性正常型(normal)はペプチドの487番目のアミノ酸がグルタミン酸(Glu)であるが,不活性型(mutant)はリジン(Lys)に置換している.したがって,DNAではGluのGAAがAAAというLysのコドンとなっている.
DNA解析により遺伝子の変異や欠失を検出する技法はこれまでに多くの報告がなされてきた.特にPCR法の開発により次に示すような方法がよく用いられる.
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